-ロボット技術の応用により精度の高い手術を実現-
医療法人愛広会新潟リハビリテーション病院は、新潟大学整形外科との協働で最新鋭の赤外線誘導式人工膝関節手術支援ロボット NAVIOTM(Smith&Nephew社製)を導入しました。このロボット支援手術は、主に変形性膝関節症、関節リウマチなどの手術治療のひとつである人工膝関節置換術で使用されます。
この度導入した手術支援ロボットは、従来以上に正確な手術を実現することが可能になることが期待されます。その結果、手術の合併症リスクを減らし、人工膝関節の耐用年数を延長させる可能性が考えられます。
このロボット支援手術は、赤外線カメラにより患者様の膝関節の位置を特定し、関節表面の形状や関節の動きを正確に読み取ることで、手術操作の誤差を低減し、安全な手術をサポートします(図1)。また手術中にコンピューター上にグラフ化された筋肉や靭帯のバランスを個人に合わせて微調整しながら骨を掘削することが可能なことから、バランスのとれた膝の動きに近づけることが期待されます(図2)。
このロボット支援手術を導入するのは、新潟リハビリテーション病院が日本海側では最初の施設となります。最新の手術システムの導入によってより安全で正確な手術を実現し、膝の疾患に苦しむ多くの地域の皆様のお役にたてることを願っております。
図1:手術支援ロボット (コンピューターユニットとハンドピース型ロボット)
図2:コンピューター画面に患者様の骨の形状と靭帯の状態を表示させ、最適な手術計画を立案
1.導入の背景
日本で変形性膝関節症の潜在患者数は 2,500 万人にのぼるといわれており、毎年 10万例以上の人工膝関節の手術例があります。また、人工膝関節のインプラント素材の耐用年数の増加により、米国では 50 代、60 代の若年者の手術も増えてきています。しかし、若年で活動性の高い場合、正確にインプラントが設置されなければ、インプラントの摩耗や弛みを生じるためインプラントが長持ちしなくなり再手術が必要になることが問題とされていました。
これまで医療法人愛広会新潟リハビリテーション病院では、コンピューターによる3D術前支援システムを用いて精度の高い人工膝関節置換術を行ってきましたが、今回、関節表面の形状や関節の動きを 1mm、1 度の精度で読み取る手術支援ロボットを導入し、ヒューマンエラーを減少させ、従来を上回る正確な手術を行います(図 1)。
この手術は、若年時の膝の形状や靭帯のバランスを再現する違和感の少ない膝関節を提供することを目指します。
2.人工膝関節手術支援ロボットの概要
手術支援ロボットは赤外線を発光するカメラを備えており、それにより手術中に膝の骨の形状や靭帯の状態を画像化・グラフ化して表示することができます。医師はこの情報を元 に、筋肉や靭帯のバランスを考慮した手術計画を立てることができます。患者様ひとりひとりに合わせたきめ細かい手術計画を立てることで、バランスのとれた違和感のない膝を再建することができます(図 2)。
ロボットのモニター画面には手術計画が表示され、計画通りの手術ができるよう医師を誘導します。また、骨を削るドリルが手術計画から外れるとロボットがドリルの動きを止め、正確で安全な手術を実現します。その精度は1mm、1 度以下の誤差で掘削できるとされています(図 3)。
図3:ロボットは正確で安全な骨掘削を支援
3.導入の意義
医療法人愛広会 新潟リハビリテーション病院は、新潟大学整形外科の協力のもと、最新の手術支援ロボットを導入し、患者様それぞれの膝の骨形状や靭帯のバランスに合わせた最適な手術を提供します。より安全に配慮した手術を実施し、安定した膝を再建することででき、患者様の QOL 向上に貢献します。 本システムの活用によって膝疾患で苦しむ新潟の高齢者の皆様の痛みを軽減し、健康長寿に貢献できることを願っています。